いい参考書?悪い参考書?
「これはいい参考書だ!」「これをやれば絶対点数が上がる!」などと、生徒に言う教師がいます。勉強法に悩んでいる学習者は、「これだけやれば」とか、「絶対」などと言う言葉に弱く、藁にもすがる思いで読み始めてはみるが、最初の数ページ、人によっては、1ページ目からわからない箇所があり、なぜか私のところに質問に来ます。「紹介してくれた教師のところに行けばいいのに・・・」と思いつつも無下にはできずに、他の本を紹介してあげ、結果、志望校に合格したという生徒を今まで何人も見てきました。そうした現象は、誰もが知っているあの超有名な先生がたのお名前が表紙に書かれている本でよく起こります。大手出版社から出されている本で、「監修」と書かれているものは、その有名な先生方は、ほとんど目を通していないはずです。入試問題などを、紙面の都合からなのか、なぜか改悪してしまい、とにかく内容がひどいものが多く、受験生や英語学習者を苦しめる一因になっています。
特に英語教師には肝に銘じてほしいのですが、ご自身の成功体験が他人にもあてはまり再現できるという可能性は、ほぼありません。留学しても必ずしも英語ができるようにはならないとは昔からよく言われますが、まさにその一例です。もちろん、現代の外国語習得法研究は相当進歩し、最善の学習法はほぼ見つかっています。それでも、明治時代からずっと悩み続けている日本人の英語学習が、突然楽に、簡単になるなどとは、まず考えられません。ところが、英語教育に関しては、毎日と言っていいほど、どんどん新しい書籍が出版されて、さも新たな、お手軽な学習法が開発されたかのように宣伝されます。
例を挙げると、単語集などは、それぞれ特徴がありますが、語彙研究もコンピュータの使用により相当進歩し、ここ20〜30年内に出版されたものに掲載されている語彙は、どれを読んでも大差ありません。そこで大事なのは、実際に使う学習者との相性です。ある人にはいい参考書が、ある人には悪い参考書だということがあるのです。そういった意味では、単語学習に関しては、これもまた相性によりますが、よい辞書が一冊あれば十分です。
最終的にどのレベルを目指すのかを本人とじっくり話し合い、一緒に勉強しながら、私の方で、合いそうな学習法を提案していきます。長続きしないものは、すぐに変えさせます。時間がもったいないので。それと同じことを、他の教科でも行います。その際には、動画学習を勧めています。様々な動画コンテンツが世にあふれているので、それらを利用しないのは、情報リテラシーの点で他の受験生の後塵を拝することになりかねないからです。あたかも王道があるかのような謳い文句に流されずに、あなただけに適した学習法を冷静に、日々探し続けてください。昔からのことわざです。”There is no royal road to learning.”